脳ざらし紀行


2004-11-01

_ [本] 勝手につける『Free Culture』への短い注釈

レッシグ『Free Culture』に関して長くて詳しい文章を求めている人は FREE ANNOTATION をどうぞ。

『Free Culture』は『CODE』や『コモンズ』に比べて内容は薄い。さらっと読める。

P42の「同人誌がどうして訴えられないか」に関しては以前に議論した。弁護士費用が高いからではなくて訴えても得るものが今の所少ないからというのが僕の意見。

P99に出てくるハリウッド巡回法廷のコジンスキー判事に関しては以前に取り上げた。非常にユニークな判事らしい。

P202。ドラッグ合法化賛成の言論が抹殺されていることに関して。犯罪を抑制するためにドラッグを合法化するという議論は実は広くなされている。例えば昨日取り上げたクーター『法と経済学』でも合法化した方が良い場合があると書かれている。

ドラッグを禁止してドラッグの調達コストを上げたとしても薬物中毒者はドラッグの消費を減らさないとする。すると薬物中毒者は犯罪によってドラッグの調達資金を得ようとするだろう。そしてドラッグを取り締まれば取り締まるほどドラッグ調達のために必要な資金は多くなり、薬物中毒者はますます犯罪を犯すようになってしまう。ドラッグを合法化すれば薬物中毒者の犯罪は減る。しかしドラッグを容易に手に入るようにしてしまえば非常習者が常習者になる率が増えてしまう。というわけで、『法と経済学』では常習者にのみ安価にドラッグを提供することを提案している。

P348。フィッシャー教授による著作権代替制度の提案に関しては、20041022.html#p0420041031.html#p05。あんまり筋が良くないように僕は思う。

_ [著作権] The Uneasy Case for Copyright

第13章 エルドレッドに関して。

著作権制度は本当に必要なのだろうか。こんなことを僕が書くと「何言ってんだ」と呆れられてしまうかも知れない。1970年に Stephen Bryer というアメリカの法学者が論文「The Uneasy Case for Copyright」の中で著作権制度には従来の理論が言うほど必要性がないかも知れないと論じた。「現行著作権法ほどの強い保護を認める必要はないであろう」(『法と経済学』P184)と述べた。

この Stephen Bryer はのち学者から判事となり1994年からはアメリカ合衆国最高裁判所の判事をつとめている。

そう Stephen Bryer こそは Eldred v. Ashcroft において反対意見を提出した二人の判事のうちの一人 Breyer 判事その人である。

"The Uneasy Case for Copyright: A Study of Copyright in Books, Photocopies, and Computer Programs," Harvard Law Review, vol. 84(2), pp. 281-355 (1970)

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