ジョセフ・スティグリッツ著「人間が幸福になる経済とは何か」、読了。素晴らしい。
2001年にノーベル賞を授賞した経済学者スティグリッツ氏がクリントン政権の経済諮問委員会での委員としての経験をもとにアメリカ経済の「狂騒の90年代」を克明に描いた本。
本書で扱っている範囲は驚くほどに広い。他の経済の本を読んでいても重なる部分が多くあって、読み比べてみるととても面白いし理解もしやすい。
例えば、本書と関連する書籍として前にも書いたように、ブラインダー、イェレン著「良い政策悪い政策」が挙げられる。ブラインダー氏とイェレン氏は90年代のFRBの金融政策に割と好意的だけど、スティグリッツ氏は評価すると同時に批判的でもある。FRBに限らず中央銀行はインフレを恐れるあまり、失業率をかえりみず金利を上げてしまうと批判する。
またクリントン政権の財政赤字削減に関しても、スティグリッツ氏は「いまから思えば、やはり私たちは赤字削減を進めすぎた」と言う。政府が将来のために投資すべき分野は教育や科学研究などまだたくさんあり、赤字を削減するだけではそれらの分野に資金が回ることはない。
誤った規制緩和、ストックオプションを経費として計上しない会計制度、銀行の不正、自分に都合の良い政策だけを押しつけるアメリカの外交政策、エンロン、ブッシュ政権、そのすべてが鋭い批判の対象となる。
筆致は情熱的であると同時に理知的である。ただ、経済学的にどういった論理を用いて議論しているかわかりにくく、良く考えないといけないところもある。それでも本書の価値は一向に減らない。
素晴らしい本だと僕は思う。
■以下は参考までに。
前にも取り上げたけど、「良い政策悪い政策」と「人間が幸福になる経済とは何か」とを読み比べているThe New York Review of Booksの書評。それと、スティグリッツの2003/11/05の講演記録、「The Roaring Nineties」。
最近のコメント