脳ざらし紀行


2009-02-25

_ 円安バブル論というバブル

2006年から2007年にかけて(100円/ドルから120円/ドル)は、1980年(250円/ドル)と同じくらいの円安だったという議論に反論されています。とても面白いです。しかし、「生産性による実質化」を理解することは難しいかもしれないので、これを別の側面から説明してみます。

次の表はアメリカの製造業の労働者の生産性と時給です。時給には給料だけでなく企業が負担する社会保障費用も含まれます。

アメリカの製造業
労働生産性(1時間当たり、1980年=100) 時給(ドル、1980年=100)
1980年 100 100
2007年 295 317

これを見ると2007年の彼らは1時間当たり1980年の3倍のものを製造できるようになっており、それに応じて約3倍の給料をもらっていることが分かります。日本はどうでしょう。

日本の製造業
労働生産性(1時間当たり、1980年=100) 時給(円、1980年=100)
1980年 100 100
2007年 267 196

日本の製造業の2007年の労働者は1980年の約2.7倍のものを製造できるようになっているのに、給料は2倍にしかなっていません。ここで「搾取だ」と叫ぶ前に次の表を見てください。

日本の製造業
労働生産性(1時間当たり、1980年=100) 時給(ドル、1980年=100)
1980年 100 100
2007年 267 376

しかし日本の製造業の時給をドルで換算すると、なんと時給は3.8倍にもなっています。生産性は約2.7倍にしかなっていないのに。これは1980年に比べて円がものすごく高くなったことが原因です。日本の製造業の労働者に「あなたの給料はドルベースで考えるとすごく高くなっています」と言っても何の慰めにもなりません。が、これがコストとしてのしかかる輸出企業にとっては非常に深刻です。

ドルベースの時給の伸びを労働生産性の伸びと同じくらいにするためには、時給をさらに3割カットするか、円を3割減価するしかありません。それが実現できるレートは140円/ドルです。これらの数字を見ても、2007年が1980年と同じくらいの円安だったというのは嘘だということが分かります。

参照元: 米労働省労働統計局 http://www.bls.gov/fls/#PROD

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