脳ざらし紀行


2009-02-08

_ となりの車線はなぜスイスイ進むのか?

すごく面白く読めました。タイトルはふざけていますが、多くの専門家にちゃんと取材して書かれた本です。西成活裕『渋滞学』よりももっと幅広い話題を取り上げています(そしてはるかに面白い)。

にしても、向こうのライターさんの、本来だったら堅い話題を、単に分かりやすく書くだけではなくて、読み物として面白いものに仕上げるテクニックにはいつも感心させられます。たとえば以下のような文章(セクションの導入部)にそれが表れています。

ロサンゼルスの全能の神

「遅れてすまない。渋滞がひどくて」。ロサンゼルスでは、「調子はどう?」と同じくらいありふれた挨拶だ。ときには、住民の半分が、残り半分の住民の到着を待っているようでもある。

だが、どうしても遅刻できない夜がある。世界が、少なくともその数億人の住民が、全員にちゃんと一堂に会してほしいと願う夜。そう、オスカーの晩だ。八〇〇台かそこらのリムジンが、スターたちを乗せて、ハリウッド大通りとハイランド通りの交差点に建つコダック・シアターへと運ぶ。赤いカーペットを踏みしめて歩くスターたちに、記者が質問を投げかける。「どんな気分です?」「その服は誰のデザイン?」。だがこのオスカーの夜、誰ももっと大きな謎を問いかけようとはしない。ロサンゼルスの渋滞の中、いったいどうやって八〇〇台のリムジンが定刻に集えるのか?

『となりの車線はなぜスイスイ進むのか?』p167

読者の興味を引き起こす、導入の文章としては最高ですね。

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