脳ざらし紀行


2005-06-28

_ [著作権] MGM v. Grokster(PDF)

注意。僕は法律に関して素人です。

判決の構成は

  • 最初にシラバスが5ページ
  • 判決の本文が24ページ
  • Ginsburg 判事らの3人の賛成意見が8ページ
  • Breyer 判事らの3人の賛成意見が18ページ

の計55ページ。ソニー・ベータマックス判例の変更ではない。ソニー判例の適用の仕方に関して、第9巡回区連邦控訴裁は間違っているという判断。判決は

We hold that one who distributes a device with the object of promoting its use to infringe copyright, as shown by clear expression or other affirmative steps taken to foster infringement, is liable for the resulting acts of infringement by third parties.

明確に表明したり、その他 著作権侵害を助長するために積極的な方法を取るなど、著作権侵害に使用することの促進を目的としていると示された場合、装置を配布する者は、第三者による侵害の結果にも責任があると我々は判決する。

と述べている。意図的に著作権侵害を助長した場合の責任をソニー判例は除去しないという論理だ。Grokster らの立場は「ユーザが我々のサービスを勝手に著作権侵害に使って困っています。」以上のものだというのが最高裁の判断だ、と言うことが出来る。

著作権侵害に使えてしまうネット上のサービスそのものの合法性に関しては、ソニー判例の適用の仕方をめぐって、Ginsburg 判事らとBreyer 判事らが鋭く対立しているようだ。というわけで、判決では判断を回避している。

we do not revisit Sony further, as MGM requests, to add a more quantified description of the point of balance between protection and commerce when liability rests solely on distribution with knowledge that unlawful use will occur.

MGM が求めるような、非合法な使用がなされることを知りつつ配布したことだけに責任が基づく場合の、著作権保護と商行為の間のバランスに関する詳細な解説のために、これ以上 ソニー判決に立ち戻ることは我々はしない。

米最高裁、P2P企業のGroksterらに著作権侵害の責任追求を認める逆転判決。青木大我氏の記事。分かりやすくまとまっている。

連邦最高裁「違法ダウンロードはP2P企業にも責任あり」。基本的なところで間違っている。「デビッド・H・スーター裁判官は次のように意見を述べている」と書いているけど、スーター判事は判決を言い渡した(deliver)だけ。「著作権侵害を奨励するような使用法を……」というのは、スーター判事個人の意見ではなく、最高裁の判決(the opinion of the Court)である。

_ [著作権] MGM v. Grokster をどう判断するか

本の画像レッシグが全面的に参加したミッキーマウス裁判の時には、Breyer 判事と Stevens 判事が異見書を書いた。この裁判は『Free Culture』に詳しい。今回はこの二人に O'Conner 判事が加わっている。とりあえず、一人増えたことを喜ぶべきか。ソニー・ベータマックス判例の変更をなんとか回避したとも取れる。レッシグはどう見るんだろう。

Groklaw は Breyer 判事の賛成意見に最大級の賛辞を送っている。

The Breyer concurring opinion is one of the most encouraging things I have read in a long time. His opinion was joined by Justices Stevens and O'Connor. It's so good to know that finally all the educational efforts are beginning to bear fruit. At least three justices on the US Supreme Court really do get it.

「賛成意見」というので分かりにくいけど、Breyer 判事は賛成意見のなかで最高裁の判決に「賛成」しつつ、P2P サービス自体にソニー判例は適用できてかつ合法であろうと述べている。ソニー判例自体の変更も必要ないと述べている。2行で長い意見書を要約するのはちょっと乱暴過ぎるので、そのまま信じないように。Breyer 判事に関しては前にこの日記で書いた

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