そもそもそのような統計自体存在しない。
1月2日付「関口宏のサンデーモーニング」で「性犯罪者の再犯率約41%(警察庁調べ)」という数字を出していた。上記のEntryを読んだばかりだったので、ちょっと高すぎはしないかと思い、念の為TBS視聴者センターに確認することにした。質問は「この41%の元になった資料は何か」というもの。担当者の人によると警察庁のHPの平成15年度の統計データ(pdfファイル)から算出したものだという。具体的には表43「罪種別 初犯者・再犯者別」の「公然わいせつ」の欄の「総数1,456」の内「再犯者611」から出したそうだ。
再犯者率と再犯率は全く別のもの。性犯罪者のうち(性犯罪に限らない)前科を持っている人の割合が「性犯者の再犯者率」。性犯罪で有罪判決を受けた人達のうち再び犯罪をおかす割合が「再犯率」。「再犯率」の統計は存在しない。
また「同一罪種の再犯者率」(これも再犯率ではない)に関しても強制わいせつや強姦は刑法犯全体から比べて高いわけではない。日記みたいなモノ。。
さっき、TV朝日のワイドスクランブルで、『性犯罪者の再犯率が50%超』とか言ってたので、「数字の根拠は何ですか?」と電話で質問したら、お客様係のお姉さんが「警察発表です」との返答。
こちらも「警察にはそう言うデータは無いが、もしかして言葉の定義を間違っていないか?」とデータを示しておかしい事を説明すると、お姉さんに「警察発表をそのまま報道しているだけなので分かりません」と切り返される。
アメリカには性犯罪者の再犯率の統計が存在する。
米国の民間団体 National Center on Institutions and Alternatives のメタ調査(既にある多数の調査を組み合わせて全体の傾向を調べる調査)によると、性犯罪の再犯率は13%程度。他の犯罪よりずっと低いくらいで、これは米国では貧困を原因とする犯罪が非常に多い事を考えると当たり前です。もともと貧しい人は刑務所を出ても貧しいままだから、生きるために犯罪に踏み切らざるを得なかったりするでしょ。
ミーガン法批判。性犯罪者の住所を周囲の住民に報告するいわゆるミーガン法に関してはその有効性自体に疑問がある。
ワシントン州はミーガン法という言葉が出来るよりずっと前の1989年に全米に先駆けて「特に危険の高い性犯罪者」についての情報の一般告知をはじめているけれど、この調査では一般告知開始後に釈放された(つまり、情報が告知されている)元受刑者のグループと、一般告知が開始される前に釈放された元受刑者のうち彼らと同程度の罪をおかした人たちのグループを比較して、それぞれ出所後54ヶ月のうちに再犯する確率を調べた。結果は、情報告知開始後の方が「やや再犯率が低い」ように見えるものの、統計学的に有意な差は認められなかったという。つまり、ミーガン法によって性犯罪者の再犯率が減るという効果はこの調査からは認められなかった。
macska dot org。macska dot org。
■追記(2006/04/08)
この後、性犯罪者の再犯率に関する調査が法務省により行われ以下のような結果になった。
性犯罪者の実態と再犯に関する分析
再犯調査の対象となった性犯罪者の再犯状況別構成比は,図2のとおりである。調査対象者のうち出所受刑者の再犯率は,39.9%(満期出所者では63.3%,仮出獄者では30.8%)であり,性犯罪再犯率は,11.3%(満期出所者では19.1%,仮出獄者では8.3%)であった。
これに対し,執行猶予者の再犯率は,13.5%(保護観察付き執行猶予者では18.8%,単純執行猶予者では12.1%)であり,性犯罪再犯率は,3.8%(保護観察付き執行猶予者では7.1%,単純執行猶予者では2.9%)であった
4 まとめ
今回の調査研究により,これまで統計的に必ずしも明らかでなかった性犯罪者の再犯率に関するデータを得られたほか,性犯罪者の実態及び再犯の状況等を類型別に明らかにするなどの成果を得ることができた。今回の調査では,性犯罪者の性犯罪再犯率は,出所受刑者が11.3%(満期出所者では19.1%,仮出獄者では8.3%),執行猶予者が3.8%(保護観察付き執行猶予者では7.1%,単純執行猶予者では2.9%)であった。
性犯罪者の類型別では,小児わいせつタイプには同種犯罪を繰り返す者が比較的多いことがうかがわれた。また,今回の調査対象者に関する限り,集団強姦タイプの性犯罪再犯率が0%であった。
がリンクされているなあというだけなんですが。
私がこれを写せば著作権に反しますので、あえてURLを載せました。ご了承下さい。
別に引用の範囲を越えてコピーしてもらっても僕は良いのだけど。やっぱりクリエイティブコモンズライセンスを適用しておいた方が便利なのかも知れない。
回答を読んでいると、負の数の掛け算は義務教育の範囲内なんだから、ちゃんと理解して下さい。と、思わなくもない。
同じ義務教育の範囲内なのに、ある教科のある知識は世間一般で常識として大抵の人が知っていて、別の知識はほとんど知られていないというのは、どうしてなんだろう。
負の数の掛け算の場合は、「どうして (-1)×(-1)=1 になるか」が教科書に書いてないからなんだけどね。前に紀伊国屋へ行って調べてみたけど、ざっと見た感じでは (-1)×(-1)=1 の証明はどの教科書にも載っていなかった。なんか良く分からない説明をどの教科書もしていた。教科書に載っていないんだから、そら知らんだろう。
仕組みを知らなくてもとにかく計算できたらそれで良いんですかね。
『フロイト先生のウソ』を読んでいると「第三者効果」に関するおもしろい記述があったので紹介。
人間は誰もが、マスメディアが他人に対して及ぼしている影響は自分に対するそれよりもずっと大きい、と考えているのである。「第三者効果」と呼ばれるこの現象は、広告、映画、ニュース、ポルノなどあらゆる形態のメディアに関して見られる。数年前、アメリカのある心理学者がこの「第三者効果」を詳細なアンケートによって明らかにして見せた。
たとえば、回答者は、子どものころメディアに踊らされて「くだらない」ものを買わされた回数は自分よりも他人のほうがずっと多い、と確信していた。また、ポルノやテレビの暴力シーンから悪影響を受ける度合いは自分よりも他人のほうがずっと高い、とも信じていた。
(中略)
被験者を二つのグループに分け、一方のグループに疑わしい情報(ダイエット食品の宣伝文句など)に特に引っ掛かりやすい人は誰ですか、という質問をした。もう一方のグループには、「道徳性の高い」情報(外国人排斥に対する抗議運動など)に最も強く影響を受けると思われる人を挙げてもらった。その結果、ほとんどの回答者がネガティブな情報の影響を受けるのは他人だと考えていることが分かった。一方、「立派な」情報には他人よりも自分の方が強く反応する、とも考えていた。
『フロイト先生のウソ』P126〜P127
さらにつづきがおもしろい。
この第三者効果がメディアの影響力をもっともらしく見せ、メディア規制を求める声を増幅させている。アメリカで行なわれたアンケート調査で、85パーセントの人が、暴力シーンとポルノは他人には有害な影響を与えると答えている。影響を受けるのは他人よりもむしろ自分だと答えた人は3.8パーセントに過ぎなかった。「自分は影響を受けない」と答えた人だけが、メディア規制に賛成していた。
『フロイト先生のウソ』P127〜P128
上の文章を読んでも大抵の人は「俺以外の奴は『自分以外はみんな馬鹿だ』と思っているのか。馬鹿だなー。」と思うんだろうか。←という考え方自体が「第三者効果」。←ちょっと用法が違う。
元の文章の主題である「メディアに影響力は本当にあるか」に関しては「強力効果論」「限定効果論」「複合影響説」「議題設定機能」「点火効果」「沈黙の螺旋理論」「第三者効果」など色々と研究の流れがあるそうだ。報道と世論の関係。
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