脳ざらし紀行


2004-06-08

_ あそんでワンちゃん

シロボン……。2ちゃんねるのスレより。

_ [本] コンピュータは、むずかしすぎて使えない!

本の画像アラン・クーパー著『コンピュータは、むずかしすぎて使えない!』、読了。参考になった。

Visual Basic の生みの親で、現在は操作デザインの会社を経営している著者が操作デザインに関して書いた本。ノーマンの『誰のためのデザイン?』みたいな内容を期待していると肩透かしをくうことになる。内容はソフトウェア業界の話+開発手法の話。

前半はありきたりなソフトウェア業界の話。操作デザインを考慮しない現在の開発手法がダメとか。プログラマは何もわかってないとか。経営者は何もわかってないとか。デザインに関する本でわざわざソフトウェア業界のこういう話が読みたいわけじゃない。特に読む必要はない。

第9章からの後半が操作デザインの話。著者が提案するペルソナを使った開発手法は以下のようなもの。

重要なものはペルソナ、目標、シナリオ。ソフトを開発する時には典型的なユーザーを想定して仮想的なユーザー「ペルソナ」を設定する。名前、性別、年齢、職業そして顔写真、すべてを設定しておく。実在のユーザーは必ず固有の癖や好みをもっているので抽象的な存在であるペルソナが有効。でたらめにペルソナを設定するわけではない。綿密なインタビューや調査を行なった上で設定する。

例えば、本の中で例として出てきた旅客機のビデオオンデマンドシステムの開発の場合、ペルソナは65歳のコンピュータに詳しくない客、9歳のゲームがしたい客、よく飛行機を利用するビジネスマンがふたり計4人。これに加えてさらに、システムを裏で操作する客室乗務員やらメンテナンスするメカニックやら飛行機のパイロットやらで計6人。あわせて合計10人のペルソナを設定している。

ペルソナの目標を設定する。ペルソナが欲しがる機能ではなく、ペルソナが達成したい目標を設定する。機能よりも目標の方が表現力が高い。

ペルソナが目標を達成しようとするときの典型的なシナリオを書く。日常シナリオと、頻度は高くないけど必須なシナリオ。

さてペルソナを使ったデザインは従来の手法と何が違うか。従来のように「どのような機能を開発するか」を考えるのではない。「どのようなユーザーがどのような目標をどのような場面で達成しようとしているか」を常に想定してデザインすること。それがペルソナを使った操作デザイン。

ある機能をソフトに追加するとき、「この機能を必要とするユーザーはきっとどこかにいるだろう」という考え方では駄目だ。確かにどこかにはいるかもしれない。けど、そのような不定型の「ゴムのユーザー」向けにソフトを作ったのではソフトは首尾一貫したものにはなりえない。

操作デザイナーが特にいい仕事をすると、ユーザーはその存在にまったく気がつかないだろう。第一級のレストランのサービスと同じで、それはさりげないものになるはずだ。

(中略)

多くの視覚的デザイナーたちは、よいデザインはクールだと思っているし、それが事実である場合もあるけれど、でもインターフェイスはどんなにクールでも、少ないほうが優れているのだ。(p369)

訳者の山形氏のあとがきはあまり参考にならなかった。

_ 操作デザインは金になるか

上の本を読んで思ったこと。

操作デザインの駄目な製品があふれているのは、プログラマたちが何も分かってないからだ。彼らは彼らの好きな風にプログラムしてしまう。結果として製品は普通の人にはむずかしすぎて使えない代物になってしまう。と、クーパー氏は述べている。

でも、ソフトが使いにくいのは作っている奴のせいだというのは単純過ぎる。それじゃ「飛行機が墜落したのは操縦ミスした操縦士のせい」と言うのと同じだ。僕が知りたいのは、なぜ使いにくい製品が作られ続けてしまうかだ。

使いにくい製品を作り続けている企業には、もっと使いやすいものを作れという市場からの圧力がかかるはずだ。でも現実はそうじゃない。

現実には操作デザインが駄目な製品があふれていると、クーパー氏も述べている。まったくその通り。でも、操作デザインが駄目な製品が世の中にあふれているということは、そんな製品が売れているということだ。つまり操作デザインが駄目だろうが消費者は構わず製品を買っている。

消費者が製品を買うときに考慮するのは機能・性能・価格・デザインであって、「使いやすさ」の優先 順位は相対的に非常に低い。

なぜなら、使いにくい製品であっても、まったく使えないわけじゃない。使いにくい製品であってもユーザーががんばれば何とかなる。機能やデザインはユーザーがいくら努力したってどうにかなるもんじゃないけど、使いにくいくらいは我慢すれば済んでしまう。一度使い方を苦労して覚えてしまえばいいことだ。

なぜ使いにくい製品があふれているのか。それは機能やデザインほど使いやすさを消費者が重視していないから。つまり操作デザインは消費者向けマーケットではそれほど金にならない。というのが僕の考え。

操作性が生産性に影響をあたえる企業の現場では操作デザインは非常に重要かもしれない。

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