あの論文で書かれているのはやらたとオープンソースを推進することではなく、特定のプラットフォームに偏ることなく、「エンドユーザ」を含むすべてのユーザが本来持っている「選択の自由」を直接的にも間接的にも奪わないような政策が必要である、という提言であると私は読みました。
そういう意味で従来の「オープンソース政策」とは一線を画していると思います。
この論文のP22〜P27で「広い意味での競争政策」として述べられているものは、そもそも競争政策の目的からずれている。また、競争政策として有効ではない。推進するつもりなら競争政策以外の別の目的を掲げるべき。これが僕の考えです。
幅広い選択肢を社会に提供することが競争政策の目的ではありません。フェアな競争を実現することが目標です。
競争政策以外の観点から代替 OS を社会に提供することには何らかの意味があるかも知れません。しかし一般的にいって、ある政策がたとえ社会的に有用だったとしても、掲げている目的とずれてしまうのはよくないです。この論文の場合、提案しているオープンソース政策がたとえ有益であったとしても、それは競争政策ではないのだから別の目的を掲げて推進するべきです。
また、政府が OS などに関して幅広い選択肢をわざわざ保障することは社会的に有益でしょうか。このような政策を正当化する経済学的な根拠は弱い、と僕は思います。
市場に対する政府の関与を正当化する理由として、外部性による市場の失敗があります。環境破壊に対する規制とか、道路の建設とか。代替 OS の提供に関して市場が失敗するというようなことが起こりうるでしょうか。僕には想像し難いです。現に、Windows 以外の OS も市場には出回っています。
ソフトウェアはコピーしても減らないので、経済学的には公共財です。最適な水準よりも過少にしか市場に供給されません。だから、単に選択肢を提供するという目的でなく、公共財を提供するという目的ならオープンソースの推進はひとつの手段だと思います。
単に選択肢を提供するためだけに、資源を浪費するのはおかしい。どうせならガンガン使われるようなソフトを作るほうがいいじゃん。ソフトはコピーしても減らないんだからコピーすればいいじゃん。せっかく作ったんだからみんなで使ったほうがいいじゃん。だからオープンソース。
悪の帝国に OS が支配されている? そのために独禁法があるんじゃん。
という意見です。
コメント欄で質問したら丁寧な答えをもらっちゃいました。ありがとうございます。
法律学と経済学に関して。「(法と経済学において)議論されていることはなるほどと思う部分も多々」あるのならそれは素晴らしいことだと思います。
法律学と経済学、どちらも専門ではないんですが、特に法律学に関してはほとんど知りません。
Marginal Revolution で The Two Things というエントリーがありました。「どんな分野でも本当に知らなければならないことはふたつしかない」という酒場での与太ばなしなんですが。その膨大なリスト。
The Two Things about Writing:
1. 必要なものは入れろ。
2. それ以外は全部捨てろ。
-Nicholas Kronos
The Two Things about Boxing:
1. Hit.
2. Don't get hit.
-Josh
とかなんとか。で、経済学に関しては
One: Incentives matter.
Two: There’s no such thing as a free lunch.
と書いています。法律学の The Two Things ってなんなんでしょう。
あと八田氏が言っているのは、単に言われている目的を果たさない法律が多いということなんじゃないでしょうか。「これからの税制のありかたについて」を参照。
脳のしわを増やすためにの2004年1月25日分に八田氏が『日本再生に「痛み」はいらない』の中で提案した政策一覧。
なかったはずの最終巻が近所のレンタルビデオ屋にあったので借りてみた。これぞ黒田洋介というグダグダなおわりかた。
どうでもいいけど、近所のレンタルビデオ屋がアニメを充実させはじめた。で、なぜか「宇宙海賊ミトの大冒険 2人の女王様」を仕入れていた。いや、これって続編だから、これから見始めてもわけ分からんような。おもしろい作品だけど。ちょっとずれてる。
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