岩田規久男、八田達夫著「日本再生に「痛み」はいらない」、読了。リフレ派のボス、岩田規久男氏の待望の新刊。八田氏とのコンビはなかなか強力。前半はリフレ政策の復習。後半は都市政策を中心とした政策提言。リフレ政策と対になる政策として規制緩和でなく「都市再生」を全面に押し出したのが目新しい。
前半部分はリフレ政策の復習。「デフレ不況の実証分析」からグラフを引用しつつデフレの弊害をコンパクトに説明している。
銀行の自己資本強化のための公的資金注入は間違っていると、岩田氏は政府の金融行政を批判している。銀行に対して繰延税金資産の還付で行うべきであり、無税引当および無税償却を認めるべきだと言う。
ここら辺の議論は難しい。ただ、RITEIの高橋洋一氏は引当は有税、償却を無税にすべきだと書いていて、岩田氏とは意見が違う。つまり、「不良債権処理」とは直接償却であるべきだ。そうでないと土地が塩漬けになってしまう。直接償却を促すために、本来引当の段階でなく、直接償却の段階で税を控除することによって、不良債権処理は促進されるべきだと、高橋氏は書いている。
岩田氏の提案がモラルハザードを引き起こさず銀行の自己資本を強化するためなのか、不良債権処理の処理の枠組みのためなのかがよく分からないので何とも言えない。
後半の都市政策を中心とした政策提言が本書のメインと言える。今までのリフレ本は、原田泰氏の著作などのように規制緩和を中心として政策を提言していた。けど、この本の政策提言は都市政策を中心として年金や税制に関する提言も盛り込むことで、著者たちも書いている通り「政策パッケージ」と言って良いものとなっている。
八田氏は東京を再生させるためには、東京への集積をさらに促進するべきであり、その障害となっている容積率の規制を変えるべきだと主張する。また、都市の容積率を単に「規制緩和」するのではなく、「規制改革」することによって、都市への住居系ビルの建築を促そうとも提案する。
東京へ人が集積すればするほど、集積の利益が生まれ、生産性が向上し、新しい産業も生まれるだろうと八田氏は言う。サービス産業においては集積していることが決定的に重要であると説く。そして、東京への集積を阻害しないような政策こそが東京という都市を再生させると言う。
これは東京意外の都市に関しても同じだと八田氏は言う。例えば、大阪に関しても梅田、新大阪、そして南港とバラバラの土地に人を分散させる現在の都市政策を批判する。もっと集積させるべきだと言う。
そのためには御堂筋の容積率を緩和して、地下鉄御堂筋線を複々線化して快速を走らせ、新幹線の駅を梅田にすること提案する。関空は貨物専用の空港にしてこれ以上拡げるなとも言っている。
関空を貨物専用の空港に…。個人的にはこれが一番うけた。
税制に関しても、自営業者に益税をあたえる今の消費税を批判し、税率を上げれば税収は増えると消費税シフトの議論を論破し、所得税の累進税率の引き上げを提案する。相続税の引き上げも提案。
感想。
本書の後半で述べられている政策提言は、経済学的にはまだまだ議論を必要とするものが多い。例えば、相続税に関してMankiwは廃止すべきだと述べている。
しかし、重要なことは、本書で述べられている個々の政策に経済学の考え方から導かれる論理の筋が一本びしっと通っていることだと、僕は思う。それによって本書の政策提言は、相矛盾したバラバラの政策のあつまりではなくて、ひとつのまとまった考え方の明解な政策パッケージとなっている。政策が相互に影響しあって相乗効果を生み出すことも期待される。
小泉首相の「構造改革」に対抗できる、政策パッケージだと断言できる。「都市再生」を全面に出して「構造改革」との違いを意識的に出している点からも、それを意図して書かれたのだろうと思われる。Amazonのレビューにもあるように「なぜ総選挙に間に合うようにもっと早く出してくれなかった」んだろう。それだけが残念。
最近経済関係の本のことばかり書いているのは、単に今年読み残した本を、まとめて読んでいるだけです。経済関係以外も含めて、まだ十数冊読み残っています。だからどうだというわけではないですが。
Amazonで中古本を買い始めたのが、読み残しの本が増えた一因でもあります。というか、あれはやばい。本好きには特にやばい。
Amazonのアソシエイトプログラムを利用して、書影を入れることにしてみました。見ればわかりますか。
個人の日記が選んだ、個人的なゲーム大賞。
Game Of The Year 2003@がらくたな日常。
今年は比較的ゲームをしなかったので、ベスト3を選ぶことさえ個人的には難しかったりする。「グランドセフトオート3」しか記憶に残っていない。あと、今年発売じゃないけど、「わいわいゴルフ」と「ミスタードリラードリルランド」は面白かった。安いし。
今は「ギフトピア」と「ガチャフォース」をプレイ中。「グランドセフトオート3」はクリア諦めた。
正月で面白いテレビ番組がないのでレンタルビデオ屋で借りてきた。
日本アニメ史上に残る名作。高畑勲がまだ天才だったころの作品。山田栄子の脳天突き抜けボイスがアンにハマっている。
第1巻は第1話「マシュウ・カスバート驚く」から第5話「マリラ決心する」までを収録。視線、しぐさ、表情、間合い、脚本、美術。どこをどう切りとっても名作。この溢れるばかりの高畑氏の才能は一体どこへ行ってしまったのだろう。
みなさん、良いお年を。
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