原田泰著「1970年体制の終焉」、読了。なかなか参考になった。しかし、ページ数が少なく食い足りない。
1940年代に戦時体制として出来上がった経済システムが高度経済成長の原動力となり、現代まで連綿と続いているという考え方がある。「1940年体制論」と呼ばれている。
原田氏はこの「1940年体制論」が全くの嘘、デタラメであると主張し、高度経済成長は経済の自由化によってもたらされたと説く。そして、通説とは異なり現在の日本経済の規制の多くは高度経済成長後の1970年代になってできたものであると言い、今後の経済成長のためにどういった規制緩和が必要かを提言する。
日本の経済成長が経済統制ではなく経済の自由化によってもたらされたという考え方は昨日挙げた三輪氏と一致する。また、戦前の日本の銀行業には「銀行と証券」あるいは「長期と短期」を分離するような規制はなかったというのは非常に勉強になった。
アメリカの航空業界の規制緩和は失敗であるといわれることがある。例えばスティグリッツ著「人間が幸福になる経済とは何か」のP137〜など。しかし原田氏によれば、規制緩和により運賃は低下し、競合する路線は増え、利用者が選択できる時間帯は拡大し、安全性も向上したそうだ。
Winston, Clifford「Economic Deregulation: Days of Reckoning for Microeconomists」が参照されていた。
ただ、スティグリッツも問題にしているように「適切な規制緩和」というのは難しく、無闇に規制をなくせば良いというものではない。日本の高度経済成長に関しても、スティグリッツは金融がある程度規制されていることの重要性を説いている。
という風に、本書で取り上げられている話題はどれも一筋縄ではいかない。その割りにはページ数が圧倒的に少なく、各論を論じ切れていないという印象が強い。参考にはなった。
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