網野善彦著、「「日本」とは何か」を読了。
日本は昔から市場経済が結構機能していたという話。「日本」とは何か、という主題とはちょっとずれるけど、僕はそんなふうに読んだ。
日本が驚くべき経済発展を遂げた理由を色々探していくと、それは戦後の経済官僚でもなく、明治維新の志士たちでもない。「江戸時代にすでに基本的には経済発展の基盤が出来ていた。」という平凡な答えになる。これが今のところの僕のぼんやりとした考え。
安定した政権。内戦状態でない国内。整備された陸上および海運交通。飢えに苦しんでいない豊富な労働力。高い識字率。市場経済。商才に長けた市井の人々。歴史の教科書では改めて強調されるようなことのない平凡なものばかりかもしれない。しかし、これらこそが経済発展にとって必要不可欠なものであり、現在の貧困に苦しんでいる発展途上国に欠けているものだ。
例えば「日本経済論の誤解」では、『明治期以来の日本の経済発展は、「銀行主導型」でも「政府主導型」でもない』ということが綿工業を例にあげて、簡単に説明されている。
この「日本経済論の誤解」によれば、日本の綿工業の勃興期に資金を提供したのは政府でも銀行でもなく、日本各地の資本家たちだった。「日本とは何か」で述べられている中世、近世の日本各地の発展した都市型経済からの流れを読みとることが出来ると僕は思う。
速水融著「歴史人口学で見た日本」、読了。「宗門改帳」をもとに江戸時代の人の動きを統計的に浮かびあがらせる。江戸時代にもかなりの数の都市への人口流入があった。職を求めて都市へと移るのは古今東西変わらない。労働市場の流動性は結構高かったのかも。ここにも市場経済の一例を見ることが出来る。
たまっている未読の本をせっせと読む強化月間。のはずがなぜか本が増えていたりする。「「日本」とは何か」での古文書の話がおもしろかったので、網野善彦著「古文書返却の旅」を買ってしまった。「環境危機をあおってはいけない」も積んではあるんだけど、読むのは何ヵ月か後になりそう。まじで。
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