脳ざらし紀行


2009-01-06

_ タレブ VS マートン

ちなみに、タレブ自身がアドバイスしたファンドは、2008年は10月までに50%の収益率を上げたという

今回の金融危機の一般人にとっての教訓は、「たくさん儲けている投資家の話の方がより信頼できるというわけでもない」ってことだと思うのですが。なのにどれだけ儲かっているかを根拠のひとつにされても……、という感じがします。

一般論として、どうも人間には「儲け話のほうを信じる」というある種のバイアスがあるみたいですね。本屋でも「絶対損するからFXはやめとけ」という本よりも「絶対儲かるFX」という類の本の方をよく見かけますし。

ちなみに元の Taleb-Derman の論文は Ruffino-Treussard の論文でも指摘されているとおり、論理の飛躍がありオプションの価格公式をちゃんとは導出できていません。要するに間違っています。put-call parityというのは無裁定条件から導出されるものです。オプションが複製可能という仮定を外して、無裁定条件だけを仮定しても、オプションの価格は一意には決定できません。Taleb-Derman の論文でも未知変数が2つあるのに方程式はひとつだけなので、方程式の解を一意に求められてなくて、価格を一意に決定できていません。

なので「一般的な仮定(非完備市場)の下では金融工学を使ってオプションの価格を決定することはできない」という主張だったら数学的に正しいのですが、「一般的な仮定(非完備市場)の下でもっと簡単にオプション価格を求めることができる」という彼らの主張は間違いです。

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