脳ざらし紀行


2004-01-04

_ [経済] 「新しい金融論」とリフレ

スティグリッツ、グリーンウォルド著「新しい金融論」を読んでいます。現在、第7章。

さて「新しい金融論」とリフレ政策は矛盾しません。スティグリッツ自身が2003年4月の日本での講演でそのように言明しています。

Deflation, Globalization and The New Paradigm of Monetary Economics

スティグリッツがこの講演を行った当時は政府紙幣の発行を提案したとしてマスコミで騒がれていました。しかし、実際の講演では金融論の新しいパラダイムを概観しつつ、日本経済のデフレに「新しい金融論」を適用して分析しています。

Deflation, particularly unexpected deflation, leads to real balance sheet effects which can adversely affect aggregate demand

This is in addition to traditional real interest rate effects

Deflation, Globalization and The New Paradigm of Monetary Economics(P16)

要するにフィッシャーのデットデフレーションの議論です。だから、当然インフレにする必要があるとスティグリッツは言います。

Shifting from deflation to inflation may help balance sheets undoing damage that deflation has done in increasing real value of debt

But some institutions with a maturity mismatch may find their balance sheet hurt may need to have inflation or interest rate puts

Shifting from deflation to inflation may lead to lower real interest rates

Deflation, Globalization and The New Paradigm of Monetary Economics(P18)

インフレ起こしてバランスシートを改善しようと言っています。岩田規久男氏らが言っていることとほぼ同じですね。極めつけは、

Strategy was tried in Sweden in Great Depression - worked

Deflation, Globalization and The New Paradigm of Monetary Economics(P22)

大恐慌時代のスウェーデンの例まで持ち出しています。おお、リフレ派とまるっきり一緒ですね。

さて、「新しい金融論」の枠組でどんな風にリフレが正当化されるかを詳しく見ると以下のようになります。以下は僕が本を読んで考えただけなので間違っているかも知れません。

  1. デフレは企業と銀行のバランスシートを悪化させて、資金需要、資金供給をともに減少させる。実質金利は減少しないかも知れないけど、貸出自体は減る。要するにデットデフレーションの議論。
  2. だから、デフレからインフレにする必要がある。
  3. しかし、予期しないインフレは、長期国債の下落を通じて、銀行のバランスシートを悪化させる。
  4. これに対処するためには、スプレッド=貸出金利-預金金利を増大させて銀行の貸出が減らないようにする必要がある。
  5. 積極的な財政政策を行い、企業の業績回復の期待の経路をさらに刺激して、資金需要を増大させて、貸出金利を上げて、スプレッドを増やす。

こんなふうになります。

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