特許制度に関して。ある制度の下での最適な戦略を考えることと、最適な制度を考えることは全く別の話です。
今の特許制度の下で最適な戦略というものがどういうものかを officeさんは議論されているようです。しかし、それは最適な制度を議論していることにはなりません。最適な制度を議論するためには、各々違った制度の下での各プレイヤーの最適な戦略を考えた上で、社会全体の効用を比較することによって、制度同士を比較する必要があります。特許保持者の効用ではなく、社会全体の効用。これが重要なポイントです。
望ましい特許制度というのはどういったものか。それはイノベーションを促進する制度です。一般に、発明するには投資が必要ですし、発明が成功するかも不確定です。このままでは社会的に望ましい水準以下の発明しかなされないかもしれません。
そこで発明に対して独占的で排他的な権利を与えることによって、発明家、企業に発明に努力し投資するインセンティブを与えて、社会全体で見て望ましい水準にまで研究開発に投資されるような状況をつくり出すのが、特許制度の目的です。
独占で排他的な権利を与えることによる弊害が存在します。それは市場への参入、市場での競争を制限してしまうことです。これは社会全体の効用を確実に下げます。だから特許権に期限をつけることによって、特許制度はバランスをとろうとしています。
最適な特許制度の第一点。特許権はお金が掛り不確実でもある発明を促すためにインセンティブとして与えられるものです。逆にいえば、お金もかからず、誰にでも確実に発明できてしまうようなものには特許権を与えるべきではありません。与えてしまえば、社会全体の効用を確実に下げます。
最適な特許制度の第二点。特許制度が生み出すコストについて。もし特許制度自体が発明にさらなるコストを発生させ、発明の障害となっていたならそのことも考慮に入れて特許制度を再設計する必要があります。
例えば、何かを作るときに他者の特許を侵害していないかを確かめるために現在では相当のコスト(サーチコスト)が掛かるとしたら、それは発明を抑制し、社会全体でみて望ましい水準以下の発明しかなされないことになります。
また、思いもよらない特許侵害により告訴される不確実性がおおきいとしたら、これも発明のコストの増加を意味します。発明に対する投資の水準を低下させます。
最適な特許制度の第三点。プレイヤーの戦略の変化。特許認定の水準が下がり、何でもかんでも特許になってしまうとしたら。プレイヤーは真に革新的な発明に努力するよりも、手当りしだいに特許を取得しまくり、競争相手を排除する戦略をとるようになるでしょう。
当然競争相手も同じ戦略をとるようになります。ここが重要なポイントです。プレイヤー全員が過剰な特許を取得するようになる(ナッシュ均衡)と、サーチコスト、不確実性、クロスライセンスを結ぶための取引コストが発生し、社会的にみて望ましい水準以下の発明しかなされなくなります。これは現在の状況に当てはまるでしょうか。あてはまるのではないかというのが僕の予想です。例えば、radiumsoftware.com の 6月11日の日記を参照。
昨日のブッシュ大統領の国連演説の各紙の記事、解説のまとめ。よくまとまっている。
昨日の演説はブッシュ大統領が国連で非難されている姿を見ることができるから重要なのではもちろんない。今のイラクの現状をどのように認識し、これから同様な政策をとるつもりなのかをブッシュ大統領が説明するまたとない機会なので重要だった。
ブッシュ大統領の演説は、イラク戦争は正しく、世界はテロとの闘いに一致団結するべき、国連はイラクの復興支援に協力するべき、イラクに関する決定権は共有しないというものだった。
で、ここから読みとれるメッセージは「国連に助けを求めた」でもなく「国連に米国を助けるよう迫った」でもない。記事がNYTimesから引用し強調しているように
状況はブッシュ大統領が譲歩する必要があるほど切迫していない。
というホワイトハウスの現状認識と、「譲歩しない」という政策方針を示したものとブッシュ大統領の演説は解釈される。
というのが、 MSN Slateや NYTimesの筆者の分析。
イラク復興に絡む利権。
大量破壊兵器探しの現状。nothing。
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